建設業の社会保険未加入事業主必見!健康保険の給付とは?

健康保険に加入することで受けられる給付の種類(概要)

療養の給付

 健康保険の被保険者が業務外の事由により病気や怪我をした時は、健康保険で治療を受けることできます。
療養の給付の範囲
1.診察
2.薬剤又は治療材料の支給
3.処置・手術その他の治療
4.自宅で療養する上での管理、その療養のための世話、その他の看護
5.病院・診療所への入院、その療養のための世話、その他の看護

入院時食事療養費

 平成18年4月1日から入院時の食事負担が1日単位から1食単位に変更されました。医療機関で提供される食事の内容が変わるのではなく、食事の負担額について、食数に関わらず1日単位で計算していたものを1食単位の計算に変更されました。
 被保険者が病気や怪我で保険医療機関に入院したときは、療養の給付と合わせて食事の給付が受けられます。
 入院期間中の食事の費用は、健康保険から支給される入院時食事療養費と入院患者が支払う標準負担額でまかなわれます。入院時食事療養費の額は、厚生労働大臣が定める基準にしたがって算出した額から平均的な家計における食事を勘案して厚生労働大臣が定める標準負担額を控除した額となっています。
 入院時食事療養費は、療養費となっていますが、保険者が被保険者に代わって医療機関にその費用を直接支払うこととなっており、患者は標準負担額だけを支払うことになります。

入院時生活療養費

 介護保険との均衡の観点から、療養病床に入院する65歳以上の者の生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養をいう。)に要した費用について、保険給付として入院時生活療養費を支給されることとなりました。
 入院時生活療養費の額は、生活療養に要する平均的な費用の額を勘案して算定した額から、平均的な家計における食費及び光熱水費の状況等を勘案して厚生労働大臣が定める生活療養標準負担額(所得の状況(※1)、病状の程度、治療の内容(※2)その他の状況をしん酌して厚生労働省令で定める者については、別に軽減して定める額)を控除した額となっています。
 被扶養者の入院時生活療養にかかる給付は、家族療養費として給付が行われます。
※1 所得の状況をしん酌して負担額が軽減される者
低所得者Ⅱ(住民税非課税世帯)
低所得者Ⅰ(年金額80万円以下等)
※2 病状の程度、治療の内容をしん酌して負担額が軽減される者
入院医療の必要性の高い患者(*)の負担については、現行の入院時食事療養費と同額の負担額となります。(居住費の負担はありません。)

保険外併用療養費

 健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となります。
 ただし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認められており、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は「保険外併用療養費」として健康保険から給付が行われます。
 また、被扶養者の保険外併用療養費にかかる給付は、家族療養費として給付が行われます。

【評価療養】
先進医療(高度医療を含む)
医薬品の治験に係る診療
医療機器の治験に係る診療
薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用
薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用
適応外の医薬品の使用
適応外の医療機器の使用
【選定療養】
特別の療養環境(差額ベッド)
歯科の金合金等
金属床総義歯
予約診療
時間外診療
大病院の初診
小児う触の指導管理
大病院の再診
180日以上の入院
制限回数を超える医療行為

療養費

 健康保険では、保険医療機関の窓口に被保険者証を提示して診療を受ける『現物給付』が原則となっていますが、やむを得ない事情で、保険医療機関で保険診療を受けることができず、自費で受診したときなど特別 な場合には、その費用について、療養費が支給されます。
1. 保険診療を受けるのが困難なとき  
2. やむを得ない事情のため保険診療が受けられない医療機関で診察や手当を受けたとき

柔道整復師等の施術を受けられる方へ

整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に保険の対象になります。
なお、骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。

はり・きゅうの施術を受けられる方へ

 主として神経痛、リウマチ、頸(けい)腕(わん)症候群、五十肩、腰痛症及び頸(けい)椎(つい)捻挫後遺症等の慢性的な疼痛を主症とする疾患の治療を受けたときに保険の対象となります。

マッサージの施術を受けられる方へ

 筋麻痺や関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例について施術を受けたときに保険の対象となります。

訪問看護療養費

 居宅で療養している人が、かかりつけの医師の指示に基づいて訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合、その費用が、訪問看護療養費として現物給付されます。
 訪問看護療養費の額は、厚生労働大臣が定める基準にしたがって算出した額から、患者が負担する基本利用料を控除した額です。
訪問看護の基本利用料は、被保険者、被扶養者ともに3割となっています。
 なお、訪問看護療養費の基本利用料は、高額療養費の対象となります。

移送費

 病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合は、移送費が現金給付として支給されます。

高額療養費・高額介護合算療養費

 重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
 ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。
 被保険者、被扶養者ともに同一月内の医療費の自己負担限度額は、年齢及び所得に応じて次の計算式により算出されます。
 また、高額療養費の自己負担限度額に達しない場合であっても、同一月内に同一世帯で21,000 円以上の自己負担が複数あるときは、これらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます。(世帯合算)
 なお、同一人が同一月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も同様です。(70~74歳の方がいる世帯では算定方法が異なります。)
 なお、同一世帯で1年間(診療月を含めた直近12か月)に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目からは自己負担限度額が変わります。(多数該当)

傷病手当金

 傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
 なお、任意継続被保険者の方は、傷病手当金は支給されません。
(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く。)

葬祭料(費)

 被保険者が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。

出産育児一時金

 出産育児一時金は、被保険者及びその被扶養者が出産された時に協会けんぽ支部へ申請されると1児につき42万円が支給されるものです。(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は39万円(平成27年1月1日以降の出産は40.4万円)となります。)なお、多胎児を出産された場合には、出産された胎児数分だけ支給されますので、双生児の場合は、2人分が支給されることになります。

出産手当金

 被保険者が出産のため会社を休み、事業主から報酬が受けられないときは、出産手当金が支給されます。
これは、被保険者や家族の生活を保障し、安心して出産前後の休養ができるようにするために設けられている制度です。
なお、任意継続被保険者の方は、出産手当金は支給されません。
(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く。)

被扶養者に関する給付

家族療養費
→被扶養者の病気やけがに対しては、家族療養費が支給されます。その給付の範囲・受給方法・受給期間などは、すべて被保険者に対する療養の給付と同様です。  
家族療養費は、被扶養者の療養に要する費用の7割(未就学児の場合は8割、70歳~74歳の方の場合は8割(ただし、平成25年3月31日までは9割))(現役並み所得者は7割))相当額を現物給付することになっていますので、実際の取扱いとしては被扶養者が外来で保険診療を受けたときは診療費の3割(未就学児は2割、70歳~74歳の方の場合は2割(ただし、平成25年3月31日までは1割(現役並み所得者は3割))相当額を保険医療機関などに支払えばよいことになります。  
保険診療として家族療養費の支給を受けることができない場合には、現金給付として家族療養費の支給を受けることができますが、この場合には、被保険者に対する療養費と同様に次の条件が必要です。
ア 保険診療を受けることが困難であるとき
イ やむを得ない事情があって保険医療機関となっていない病院などで診療・手当等を受けたとき
なお、入院時食事療養費、入院時生活療養費と保険外併用療養費は、家族療養費として給付されます。

高額療養費
→被保険者と同じです。

高額介護合算療養費
→被保険者と同じです。

家族埋葬料
→被保険者と同じです。

家族出産育児一時金
→被保険者と同じです。

資格喪失後の保険給付

保険給付を受けている人が資格を喪失した場合(継続給付)
→資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人は、資格を喪失した際に現に受けていた傷病手当金及び出産手当金を引き続き受けることができます。
 傷病手当金は1年6か月間、出産手当金は出産前後合わせて原則98日間の範囲内で、支給を受けることができることになっていますが、この期間から被保険者である間にすでに支給を受けた残りの期間について受けることができます。

資格を喪失した後に保険給付を受ける事由が生じた場合

 死亡に関する給付と出産育児一時金の給付の2種類があります。
1.死亡に関する給付
次の場合は、埋葬料か埋葬費が支給されます。
①継続給付に該当する人が死亡したとき
②継続給付に該当する人が継続給付を受けなくなってから3か月以内に死亡したとき
③被保険者が資格を喪失して3か月以内に死亡したとき
2.出産に関する給付
資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人が資格喪失の日後、6か月以内に出産をしたときは、被保険者として受けられる出産育児一時金が支給されます。

給付制限を受ける場合

 健康保険では、故意の犯罪行為など制度の趣旨に反するような恐れがあるときは、社会保険の公共性の見地から一定の条件のもとに給付の全部又は一部について制限を行うこととなっています。また、給付を行うことが事実上困難な場合とか他の制度から同様の給付が行われた場合の調整的な意味あいでの給付制限もあります。
 具体的には、次のような場合に保険給付の制限または調整が行われます。
1.故意の犯罪行為又は故意に事故をおこしたとき
2.けんか、よっぱらいなど著しい不行跡により事故をおこしたとき
3.正当な理由がなく医師の指導に従わなかったり保険者の指示による診断を拒んだとき
4.詐欺その他不正な行為で保険給付を受けたとき、又は受けようとしたとき
5.正当な理由がないのに保険者の文書の提出命令や質問に応じないとき
6.感染症予防法等他の法律によって、国又は地方公共団体が負担する療養の給付等があったとき
第3者行為による場合
 自動車事故などで健康保険で医者にかかったときは、健康保険で治療は受けられますが、かならず「第三者行為による傷病届」を保険者へ提出します。事故証明書、および示談が成立していれば示談書なども添えます。届書をすぐには作成できないときは、口頭でも電話でも、一刻も早く保険者に届け出ておき、後日できるだけ早く正式な書類を提出してください。

高額医療費貸付制度

 全国健康保険協会では高額な医療費の支払いに充てるための費用が必要である場合に、高額療養費が支給されるまでの間、無利子の貸付制度がありますのでご活用ください。
 高額療養費は同一月に支払った医療費が、一定の自己負担限度額を超えた場合に本人の申請により支給されますが、医療機関等から提出された診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行いますので、決定に約3ヶ月かかります。
 そのため当座の医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付を行う制度です。

出産費貸付制度

 全国健康保険協会では出産に要する費用が必要である場合に、出産育児一時金が支給されるまでの間、無利子の貸付制度がありますのでご活用ください。
 貸付金額は1万円を単位とし、出産育児一時金支給見込額の8割相当額を限度とします。

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