知ってれば得するかも?人事・労務最新情報(2017年9月)
来年4月から本格化する「無期転換ルール」に関する調査結果
☆改正労働契約法で定められたルール
2013年に「改正労働契約法」が施行され、同法18条により、同じ事業主の下で契約更新が繰り返されて通算5年を超えた有期契約労働者は、本人の申出により「無期雇用」として働くことができるようになりました(いわゆる『無期転換ルール』)。
施行から5年が経過する来年(2018年)4月1日から本格的に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じることとなりますが、そんな中、連合から『有期契約労働者に関する調査報告』が発表されました。
☆ルールの認知度は?
この調査は、本格的に無期労働契約への転換が始まる前に、有期契約労働者の改正労働契約法についての認知状況や考えを把握するため、
今年4月に実施されたものです(有効回答者数:1,000名)。
まず、『無期転換ルール』について、「ルールの内容まで知っていた」は15.9%にとどまっており、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が32.9%、「ルールができたことを知らなかった」が51.2%で、この2つを合計した『内容を知らなかった』は84.1%となっています。
ルールの対象者となる労働者の中ではまだまだ認知度が低いようです。
☆ルールに対する考え方
また、『無期転換ルール』についての考えを尋ねたところ、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」が54.5%で最も割合が高く、次いで「無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる」が37.1%、「契約更新して働き続ける可能性が狭まる」が31.3%となっています。
☆会社としての対応は?
いずれにしても来年4月からこの『無期転換ルール』の適用が本格化するわけですから、「まだ何も対応していない」という会社では、まずは対象となる従業員に対して制度(ルール)を説明し、あわせて無期転換となる労働者の待遇の決定、規定の整備等を行う必要があります。
「マイナンバー制度」戸籍事務に拡大で手続きを簡素化へ
☆戸籍法改正の方針を明らかに
法務省は、マイナンバー制度の利用範囲を戸籍事務に拡大するため、戸籍法の改正について、9月中旬の法制審議会に諮問する方針です。
その後、法制審議会での審議を経て、2019年の通常国会に「戸籍法改正案」の提出を目指すとしています。
☆「戸籍制度に関する研究会」における議論
戸籍事務におけるマイナンバー導入は、法務省の「戸籍制度に関する研究会」で議論されてきました。
その結果、「戸籍情報連携システム」(仮称)を構築し、戸籍事務においてもマイナンバー制度の連携情報を必要な範囲で参照できるようにすることとされました。
しかし、番号法(マイナンバー法)上、行政事務に対する情報提供については、原則として情報提供ネットワークシステムを利用して行われるため、1994年以後の電子化された戸籍に限ることとし、電子化以前のものは対象外となります。
☆連携情報と文字問題
現在の戸籍情報システムは各市町村で個別に構築され、登録されている文字情報もそれぞれに異なります。
例えば、氏名で用いられる文字には常用漢字等に含まれないものも多くありますが、連携情報を整備しようとすると、名寄せができず、戸籍記録にマイナンバーを紐付けることができないおそれがあります。
そのため、上記の研究会では、今後、戸籍情報に記録される文字に関する制限や、すでに記録されている情報についても字形の同一化を実現する措置の必要性を検討するとしています。
☆連携により簡素化される手続き
マイナンバー制度と戸籍事務の連携が実現すれば、戸籍証明書(謄本、抄本)の添付を必要とする手続き、例えば婚姻届の提出や老齢年金・年金分割の請求、児童扶養手当の請求、パスポートの申請等での添付が不要になります。
ただし、上記の通り連携の対象とされるのは1994年以後の電子化された戸籍に限られるため、例えば、相続のように出生から死亡までのすべての戸籍記録が必要とされるような手続きにおいては、当面の間は簡素化されないこととなります。