知ってれば得するかも?人事・労務最新情報(2017年5月)

知ってれば得するかも?人事・労務最新情報(2017年5月)

副業・兼業をめぐる企業の実態と今後の対応

☆「働き方改革実行計画」の公表
政府・働き方改革実現会議から「働き方改革実行計画」が示され、主な項目として、(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、(2)賃金引上げと労働生産性向上、(3)罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備等が挙げられており、法改正を含めた今後の動向に注目が集まっています。
(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備の1つとして「副業・兼業の推進」がありますが、「副業・兼業」について、現在の企業の対応はどのようになっているのでしょうか。

☆禁止している企業の割合は?
3月14日に経済産業省から「多様で柔軟な働き方に関する3研究会報告書」が公表されましたが、この中の「兼業・副業を通じた 創業・新事業創出に関する研究会 提言書」によると、兼業・副業を禁止している企業の割合は77.2%でした。
また、「就業規則において禁止している」企業が48.0%、「兼業・副業に関する規定自体ない」企業が39.6%(2017年2月/リクルートキャリア社調べ)となっています。

☆メリットとリスクの両面から考える
副業・兼業については否定的な企業、または(容認しない前提で)規定自体がない企業が多いのが現状です。
副業・兼業については「社員の能力の成長を促すことができる」「社内では作ることができない人脈を作ることができる」といったメリットが強調されていますが、社内情報流出や個々人の労働時間の増加といったリスクもあります。
今後、厚生労働省のモデル就業規則が兼業・副業について「原則容認」とする方向で改定され、推進に向けたガイドラインが策定される予定となっていますが、企業としてはメリットとリスクの両面を勘案し、社員の副業・兼業に対してどのようなスタンスで臨むのか(認めるのか・認めないのか)、今から十分に検討しておくことが必要です。

年金・健康保険におけるマイナンバー利用に関する最近の動き

☆平成29年1月からマイナンバー利用開始
日本年金機構と協会けんぽ、健康保険組合では、平成29年1月からマイナンバーを利用しており、各種申請書にもマイナンバー記入欄が設けられています。その他、年金事務所で年金相談・各種照会を行う際には、基礎年金番号がわからなくてもマイナンバーを提示すれば対応してもらえる等、変更点があります。

☆申請書へのマイナンバー記入の要否
年金関係の届書は、1月以降、順次マイナンバーの記入が求められています。
具体的には、1月から「年金受給権者現況届」に、4月から「年金請求書等」「扶養親族等申告書」に記入することとなっています。
ただし、日本年金機構に提出する「被保険者資格取得届」には基礎年金番号を記入し、マイナンバーは記入しないこととされているのでご注意ください。
健康保険では、「任意継続被保険者被扶養者(異動)届」への被扶養者のマイナンバー記入以外は、任意とされています。

☆「情報連携」は10月から本格開始?
7月からは、マイナンバー制度を使って国や自治体がデータをやり取りする情報連携の本格運用開始が予定されていましたが、政府は3月17日に3カ月の延期を発表しました。
情報連携が開始されれば、行政サイドでの関係各機関への照会等により申請者に関する情報を確認することで申請者自身は各種証明書等を提出しなくてもよくなるため、残念なニュースです。

☆健康保険組合はマイナンバー利用システムに反発
さらに、健康保険では、マイナンバーを利用して給付申請者の所得や扶養家族、他の給付の支給状況について協会けんぽや健保組合が確認できるシステムの構築を進めています。
このシステムの利用料をめぐって「高額過ぎる」との反発が保険者からあり、現在、厚生労働省は利用料の大幅引下げ、また、情報参照を含む全面延期を検討しています。
協会けんぽではこのシステムの利用により、7月から申請者がマイナンバーを申し出れば給付申請時の非課税証明書等の添付を省略可能とする予定でしたが、影響を受けることとなりそうです。

初めての勤務先を辞める理由と辞めさせないためのフォロー研修

☆今年の新人は早期離職傾向?
日本生産性本部による今年の新人社員のタイプ(タイプ分け自体の是非はともかく)は『ポケGO型』で、はじめは熱中して取り組むけれども、飽きやすい傾向も(早期離職)あるとのことです。
新人社員研修として、「社会人の心構え」「ビジネスマナー」「会社の仕組みやルール」を内容とする会社が多いと思いますが、最近では、新人が自分を振り返り、情報を共有することができるように「新人社員フォロー研修」を行い、早期離職防止に役立てようという企業も多いようです。

☆初めての勤務先を辞める理由は?
「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」(JILPT)では、「初めての正社員勤務先を離職した理由」として、長時間労働、採用時に聞いた労働条件と現実とが異なることを挙げる人が多いことがわかりました。
残業代の不払い、人手不足、希望した日に有給休暇が取れないなどといった職場でのトラブルの経験者が離職するが傾向にあり、女性では「結婚・出産・育児・介護を理由に辞めるよう言われた」人の86.8%が、男性では「暴言・暴力・いじめ・嫌がらせ」を受けた人の49.5%がその後離職しています。
また、離職者には、採用後3カ月間に指示が曖昧なまま放置され、何をしたらよいかわからなかったり、先輩社員と同等の業務を初めから任せられたりした人が多く、歓迎会を開いてもらったり、他事業所・他部署の人に紹介されたりした場合には勤続傾向が高まるようです。
こうしたことから、入社後3カ月程度の職場に対する不満が現れてくる時期や、ある程度仕事に慣れてきた“中だるみ”の時期(入社後半年程度)にフォロー研修を行う会社が多いようです。
一方、若い女性社員層では「わからないことがあったとき自分から相談した」「希望の仕事内容や働き方を伝えた」「働きぶりに意見・感想を求めた」場合に、むしろ離職傾向が高まるとの結果も出ています。
これは積極性の現れではなく、すでに離職の考えが顕在化している状態と見たほうがよいということでしょう。

☆満足度の高い上司からの指導内容は?
また、上司の指導や支援についての満足度に関する調査(JILPT)では、「仕事のやり方について助言してくれる」「仕事に必要な知識を提供してくれる」「現在の仕事について相談に乗ってくれる」といった点について、部下の満足度が高い結果となっています。
いずれにしても、コンプライアンスとともに上司や先輩社員からのコミュニケーションをとることが大切ですが、率先して進めることができる“場”を作ることが重要な経営課題の1つと言えるでしょう。

「転勤ルール」の整備はお済みですか? “働き方改革時代”の転勤とは?

☆「ノー転勤」社員が増加している
昨年、JILPTは「企業における転勤の実態に関する調査」を行いました。これによると、61.2%の企業が「正社員(総合職)の転勤の可能性がある」と回答しいます。
同調査結果で特に興味深いのは、この「転勤がある企業」において、過去3年間で転勤配慮の要望が「増えた」という回答は、男性社員で18.2%、女性社員で11.7%と、いずれも「減った」を大きく上回っている点です。
従業員が転勤に難色を示すのはいつの時代も同じですが、今どきの従業員は、声を上げて「ノー」と言う傾向にあります。

☆政府も転勤ルールを整備中
政府も現在、転勤に関する雇用管理ルールの整備・検討を進めています。
いわゆる“働き方改革”の大きな柱にワーク・ライフバランスがありますが、転勤は、単身赴任や配偶者の転職をともなったり、育児・介護を困難なものにしたりと、ワーク・ライフバランスを大きく損なってしまうものとして、政府からも問題視されているのです。

☆簡単に転勤を命じられない時代
もちろん企業には法律上、配転命令権が認められています(ただし濫用は禁止されています)。事業所間の人員調整、ジョブローテーションによる人材育成など、転勤が必要な事情もあるでしょう。
しかし、今や転勤は会社が必ずしも自由に命じることができるものではなく、自社従業員や政府から「配慮」を求められてしまうご時世だということは、認識しておくべきです。

☆転勤にまつわるトラブルを防ぐために
転勤における「配慮」としてもっともわかりやすいのは、賃金を上乗せすることでしょう。
リクルートワークス研究所『Works No.134』によると、転勤による賃金の割増率は、例えば野村證券では10~15%、モスストアカンパニーでは10%であり、概ね10~20%の割増賃金を支払えば、多くの人が納得しやすい水準とのことです。
ただ、賃金はほんの一例です。勤務時間、業務内容、転勤後の社内キャリアといった処遇について、社内ルールの未整備により、転勤対象者とそうでない従業員(地域限定社員やパートタイマーなど)の双方に不公平感があると、転勤濫用を疑われたり、転勤を理由とする離職につながったりしかねません。
転勤ルール(社内規程、賃金制度等)をきちんと整備して、従業員に周知しましょう。

厚生労働省公表の「受動喫煙対策強化案」のポイント

☆違反した喫煙者・事業者に過料
厚生労働省が3月1日、東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙対策の新たな規制強化案を公表しました。
飲食店は原則禁煙とし、例外として喫煙できるのは小規模なスナックやバーなどに限定するなどが骨子で、違反した喫煙者が行政指導に従わない場合には30万円以下、事業者が従わなかった場合には50万円以下の過料を科すとしています。
同省は強化案を踏まえた健康増進法の改正案を今国会に提出する予定で、2019年秋に日本で開催されるラグビーワールドカップまでの施行を目指します。

☆「努力義務」から「義務化」へ
日本の受動喫煙対策はこれまで努力義務にとどまり、世界保健機関(WHO)からは「世界でも最低レベル」と厳しく批判されてきました。
このため、新たな規制強化案では受動喫煙対策を義務化します。
禁煙の範囲は、小中高校や医療機関は最も厳しい敷地内禁煙とし、官公庁や福祉施設などは建物内禁煙とします。運動施設も建物内禁煙としますが、コンサートが行われるなど興行目的でも利用される場合は喫煙室の設置を認めます。

☆小規模なバーなどは一定の条件下で例外に
飲食店は屋外のテラス席も含め禁煙としますが、喫煙室の設置は認めます。居酒屋や焼鳥屋などについても、家族連れや外国人観光客の利用を想定し、対策を徹底することとしました。
一方、例外として小規模なバーやスナックなどでは、「受動喫煙が生じうる」との掲示や換気を条件に喫煙を認めます。面積が約30平方メートル以下の店が候補で、法案成立後に政令で定める予定です。なお、ホテルの客室や老人福祉施設の個室なども喫煙は可能です。

☆5年間の経過措置
また、今回の規制強化案では、既存の喫煙室については施行後5年間、排気装置などで一定の基準を満たせばそのまま使用を認める規定を盛り込みました。
飲食店など喫煙室の設置が認められている施設だけでなく、医療機関や官公庁なども対象にしています。
ただし、禁煙ではなく分煙を推進すべきだとの意見は根強く、調整は難航する可能性があります。

男女間、正規・非正規間の賃金格差が過去最小に

☆女性の平均賃金が過去最高に
厚生労働省が発表した平成28年の「賃金構造基本統計調査」によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4,600円(前年比1.1%増)となり、過去最高を記録したそうです。
一方、全体の平均賃金は30万4,000円、男性の平均賃金は33万5,200円で共に前年と横ばいでした。
また、男性の賃金を100%とした場合に女性は73%となり、男女間賃金格差は過去最小を更新しています。これは20年前(平成9年)よりも約10%縮まったことになります。
同省は、賃金格差の縮小は「管理職に占める女性の割合が過去最高の9.3%だったことにより、平均賃金を押し上げた」と分析しています。
昨年から女性活躍推進法が施行され、今後、企業は女性の採用や管理職への登用を積極的に進め、その格差はさらに縮まっていくことが予想されます。

☆雇用形態間賃金格差も過去最小に
雇用形態別に平均賃金を見ると、正社員は32万1,700円(前年比0.2%増)、非正規社員は21万1,800円(同3.3%増)でした。
正社員を100%とした場合に非正規社員は65.8%となり、平成17年の調査開始以来賃金の格差は最小となりましが、これは人手不足などを背景とする女性の非正規社員の給与アップや最低賃金の上昇などにより格差が縮まったのが要因とされています。
また、短時間労働者の1時間当たり賃金は、男女計1,075円(前年比1.5%増)、男性1,134円(同0.1%増)、女性1,054円(同2.1%増)となっており、いずれも過去最高となっています。

☆「同一労働同一賃金」で賃金はどう変わる?
賃金の男女間の格差、正規・非正規間の格差は年々小さくなっています。その中でも男性の賃金の伸び止まりや女性の活躍推進が大きな問題となりそうです。
また、現在、政府で議論されている「同一労働同一賃金」の実現に向けた非正規社員の処遇改善についての動向にも注目しておく必要があります。

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